渋谷は空気が悪いから、近寄ってはならないよと言い続けて何年になりましょうか。
だから当然自分でも、渋谷で歌うことはあるまい。と思っていたものでした。
この理由は、空気が悪い立地だから、という当たり前のものと、うちからちょっと遠いから。帰宅の折には必ず大新宿を通過しなくてはならず、そんな山手線だとか埼京線なんか使いたくない、という言い分があったのでした。ところが今や、副都心線があります。これが案外快適で。昨夜も結局通勤急行なるもので、新宿池袋と駅を飛ばし飛ばし走ってくれるものですから、期待より早く帰宅できました。思ったよりもいいじゃん渋谷。
にしても。何が好かんって。昔の印象で言うと、渋谷を歩くと、地方ナンバーの自動車で渋滞ができるんですよ。何を目指してこんな狭い道に狭い街に自動車で乗り込んでくるのか。と、あれがどうにも気に入らなかったのですね。たぶん、そうやって皆が目指してくる感じに、ながらく馴染めなかったのでしょう。
もちろん、今もそうです。会場入りして最初にお茶を買いに、数軒隣のファミリーマートへ行きました。その往復の地上の暑さと人の多さ、それから街ゆく人たちのほらあの、妙に浮ついた空気。こんなに毎日が、人との距離を作ることのストレスにやられているのに、まるでこの街こそは最先端で あの日常 を取り戻していますと主張せんばかりの空気。これについていけませんでした。終演まで楽屋に籠もってしまったわけです。
とまた、どうでもどうでもどうでもいいことに行を費やしました。
ご来場の皆さま、配信をリアルタイム視聴された皆さま、ありがとうございました。この夏、ただの20分のセットリストをどうやって作ろうか、の試行錯誤をしてきました。それの完成形です。
また今回は、お客さんに声を出すことなどを煽ってはならない。というルールに厳密に従ってみました。この街に来てしまったからには、どんなにやりすぎてもやりすぎはないくらいの配慮を、僕なりにしておかなくちゃという気持ちになりました。振り返れば、まあ手拍子くらいは煽ってもよかったかしらとは思いますが。とはいえ、そんなわけで今、選りすぐりの曲たちです。じっくりいい環境で眺めてもらえるだけでも、形になるにちがいないと信じて。
主催の池袋フィールドにはただただ感謝。今後も僕というコマが必要とあらば使ってください、と言える関係が今後も続くことと思います。
それにしても、出演打診をいただいてから、これが投げ銭ライブであることをあまり意識していませんでした。前回出場した投げ銭ライブが、ライブ空間での緊張と高揚で、実に充実した、文字通り伝説的投げ銭ライブだったことを、ギリギリに思い出しました。あれだよなあ。ライブの面白さは。
限定CDを作りました。この時期に渋谷に頑張って来られた方への感謝的特典、という意味を込めて。内容は、このライブのセットリストが完成する前の、違う曲が混ざっているリハーサル演奏音源。と、この、通り過ぎてしまった春と梅雨に作った二曲(張子さん、もう一度アラート)の録音版が収録されています。今後こういう形のリリースも、いいかもしれない、と思いました。
そうそう。実弟たちとのLINEグループでのやりとりは、開演前18時台に少しできました。参加できない嘘の理由を伝えてやり過ごすか、本当の理由を伝えリアクションに困られながらやり過ごすか、どちらにすべきか考えていました。よくあることです僕は斯様に腫れ物であるが故、少しでも外でバランスをとろうとする次第です。